シェアワールド~√劇場の裏~

複数の作者が共通の世界観で紡ぐ物語やイラストの集まり。様々な要素が重なり合い、並行世界は形作られている。

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イースター

一週間ほど前、僕はアパートの一室で一人歓喜していた。「ぁ……当たった……‼︎」日が暮れて間もない時刻、大声を出すとまた大家さんに怒られてしまう。それでも声は抑えきれず漏れ出した。「帝都ネオミヤコ広場……サイバースペースイルミネーションのペアチケッ…

亜人行録Ⅴ(完)

「君は一人の亜人を人間にしようとしていたそうだな」暗い廊下、僕と老人はある場所へと向かっている。「……ええ。僕はそう言いながら、彼女のことを……弄び続けていました」「そうか」僕の予想に反して、彼の返答は怒るでもなく悲しむでもなく、ただただあっ…

亜人行録Ⅳ

暗い部屋、岩の神父は僕の顔を覗く。「それでは、単刀直入に言おう。選ばせてやる。我々の下に来るか?君のその技術力は貴重なリソースだ」……駄目だ、僕には人質がいる。トメニアに捕らえられたタマミの姿が脳裏を過る。僕がこの男の勧誘を呑もうものならば…

亜人行録Ⅲ

僕には夢がなかった。「貴方は何が望みなの……?」タマミは震える声で僕に問いかけた。僕には紡ぐ言葉がなかった。「私……、貴方の望む通りになろうと頑張ったんだよ?たとえ、どんなに小さな事でも努力してきたんだよ……?」彼女は怒りに全身を震わせていた。…

亜人行録Ⅱ

バクテリア共和国、城塞都市ディーテ。冥府の神の名を持つこの街は、強固な電子結界があるお陰で現在はバクテリア国家警察の臨時的な拠点となっている。ゲルニカから下車した僕の目に入ったのは、視界に入りきらないほど巨大な城壁だった。その壮麗で隙のな…

亜人行録Ⅰ

沢山の人が死んでいた。地を埋め尽くすように転がる死体達の顔は全て、同じ顔をしていた。沢山の僕の死体が地平線を作っていた。僕はその情景を見ても恐怖を感じなかった。手に残る血の跡、むせ返るような死臭。胃酸が喉を逆流しようとしていた。僕はなぜ自…