シェアワールド~√劇場の裏~

複数の作者が共通の世界観で紡ぐ物語やイラストの集まり。様々な要素が重なり合い、並行世界は形作られている。

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

亜人行録Ⅴ(完)

「君は一人の亜人を人間にしようとしていたそうだな」暗い廊下、僕と老人はある場所へと向かっている。「……ええ。僕はそう言いながら、彼女のことを……弄び続けていました」「そうか」僕の予想に反して、彼の返答は怒るでもなく悲しむでもなく、ただただあっ…

ある少女 after

相変わらず地味なトレンチコートを羽織り、私は自宅を後にする。 今時珍しくもない自動認識ドアは私の意識に反応して、重苦しく開く。 ロック解除 シュゴー 今朝は黒い泥水を一杯だけ。 頭が冴えわたるわけでもなく、気持ちだけ軽くなる。 地下鉄なんて言葉…

土の便りは水道から 第2話

「あ、詩帆おはよ~」 教室に入ると、喧騒の中から式部真子の少し気の抜けたような声が飛んできた。 中学1年生から奇跡的に連続して同じクラスになった彼女は気の置けない友人だ。 「おはよ~。あぁまたギリギリだ」 荷物を机に置きながら教室の時計を見る…

亜人行録Ⅳ

暗い部屋、岩の神父は僕の顔を覗く。「それでは、単刀直入に言おう。選ばせてやる。我々の下に来るか?君のその技術力は貴重なリソースだ」……駄目だ、僕には人質がいる。トメニアに捕らえられたタマミの姿が脳裏を過る。僕がこの男の勧誘を呑もうものならば…

ある少女

わたしは鏡をみていると思った。 それは万華鏡だ。 地下都市日本、エリア0024。 いくつもの、わたしがいる。 はっきりいって異常だ。 パパが作ってくれたカプレーゼを今朝食べたのを思い出す。わたしの目の前にはカプレーゼとは程遠い物質が飛散している。 …

亜人行録Ⅲ

僕には夢がなかった。「貴方は何が望みなの……?」タマミは震える声で僕に問いかけた。僕には紡ぐ言葉がなかった。「私……、貴方の望む通りになろうと頑張ったんだよ?たとえ、どんなに小さな事でも努力してきたんだよ……?」彼女は怒りに全身を震わせていた。…