シェアワールド~√劇場の裏~

複数の作者が共通の世界観で紡ぐ物語やイラストの集まり。様々な要素が重なり合い、並行世界は形作られている。

2016-01-01から1年間の記事一覧

亜人行録Ⅴ(完)

「君は一人の亜人を人間にしようとしていたそうだな」暗い廊下、僕と老人はある場所へと向かっている。「……ええ。僕はそう言いながら、彼女のことを……弄び続けていました」「そうか」僕の予想に反して、彼の返答は怒るでもなく悲しむでもなく、ただただあっ…

ある少女 after

相変わらず地味なトレンチコートを羽織り、私は自宅を後にする。 今時珍しくもない自動認識ドアは私の意識に反応して、重苦しく開く。 ロック解除 シュゴー 今朝は黒い泥水を一杯だけ。 頭が冴えわたるわけでもなく、気持ちだけ軽くなる。 地下鉄なんて言葉…

土の便りは水道から 第2話

「あ、詩帆おはよ~」 教室に入ると、喧騒の中から式部真子の少し気の抜けたような声が飛んできた。 中学1年生から奇跡的に連続して同じクラスになった彼女は気の置けない友人だ。 「おはよ~。あぁまたギリギリだ」 荷物を机に置きながら教室の時計を見る…

亜人行録Ⅳ

暗い部屋、岩の神父は僕の顔を覗く。「それでは、単刀直入に言おう。選ばせてやる。我々の下に来るか?君のその技術力は貴重なリソースだ」……駄目だ、僕には人質がいる。トメニアに捕らえられたタマミの姿が脳裏を過る。僕がこの男の勧誘を呑もうものならば…

ある少女

わたしは鏡をみていると思った。 それは万華鏡だ。 地下都市日本、エリア0024。 いくつもの、わたしがいる。 はっきりいって異常だ。 パパが作ってくれたカプレーゼを今朝食べたのを思い出す。わたしの目の前にはカプレーゼとは程遠い物質が飛散している。 …

亜人行録Ⅲ

僕には夢がなかった。「貴方は何が望みなの……?」タマミは震える声で僕に問いかけた。僕には紡ぐ言葉がなかった。「私……、貴方の望む通りになろうと頑張ったんだよ?たとえ、どんなに小さな事でも努力してきたんだよ……?」彼女は怒りに全身を震わせていた。…

亜人ハンターⅡ

私の意識が戻ったのは、白い部屋のベッドの上だった。部屋は奇妙な静けさに包まれている。 まるで世界が死んで、無と化したかのようだ。 全身の感覚が気薄な私は、右手を握ってみる。僅かながら指先の肉と手のひらの肉が接触するのがわかる。生きている。無…

土の便りは水道から 第1話

目覚ましが鳴る前に街宣の声で目が覚めてしまった。 今日も彼らは地下世界の先住民、「亜人」の脅威を煽っている。

亜人行録Ⅱ

バクテリア共和国、城塞都市ディーテ。冥府の神の名を持つこの街は、強固な電子結界があるお陰で現在はバクテリア国家警察の臨時的な拠点となっている。ゲルニカから下車した僕の目に入ったのは、視界に入りきらないほど巨大な城壁だった。その壮麗で隙のな…

亜人行録Ⅰ

沢山の人が死んでいた。地を埋め尽くすように転がる死体達の顔は全て、同じ顔をしていた。沢山の僕の死体が地平線を作っていた。僕はその情景を見ても恐怖を感じなかった。手に残る血の跡、むせ返るような死臭。胃酸が喉を逆流しようとしていた。僕はなぜ自…

進め、地下へ

とある地下掘削現場。 古びたポスターを張り付けた大型の人型二足歩行重機が、 土壁を削って新しい空間を作っている。 ポスターには、堂々たる人型重機の姿とともに、 あるキャッチコピーが書かれていた。 『進め、地下へ もはや地上に用はない』 かなり過激…

亜人ハンター

今、私は亜人に噛みつかれて真っ赤なブランケットの上で朦朧としている。 彷徨える人間に残された希望として《亜人》を狩る亜人ハンターは、実のところ憧れの対象として以外に、まるで汚穢処理のように私のような罪人の更生のプログラムに組み込まれていた。…

プロローグ

「-2035年という年号は戒めだ」 第三次世界大戦という歴史は、人々が口にすることを許さぬほど凄惨なものであった。 焦土と化した地上は取り返しのつかぬ環境汚染に晒され、人類は地上に代わる新たな楽園を地下に求めることとなる。 人類の地下への移住は、…

作者紹介

このシェアワールドに作品を投稿する作者の紹介ページです。順不同。 ●ペンネーム:水無月 十六(みなづき じゅうろく) 絵描きか文字描きか:文字描きだが絵描きにもなりたかった。 好きな作品:映画ならゴッドファーザー三部作、小説ならロビンソン・クル…