ある少女
わたしは鏡をみていると思った。
それは万華鏡だ。
地下都市日本、エリア0024。
いくつもの、わたしがいる。
はっきりいって異常だ。
パパが作ってくれたカプレーゼを今朝食べたのを思い出す。わたしの目の前にはカプレーゼとは程遠い物質が飛散している。
あれは……。
おそらく亜人だ。
「グレーテルちゃん、グレーテルちゃん。遊びましょう」
亜人は言う。それは群衆。あるいは天使。
ネロ僕はもう眠いよ……。
彼女たちに「でも、お家に帰らなきゃ」と言う。
12時の鐘が鳴り、魔法が解ける前に。
ガラスの靴を残して。
「じゃあ、わたしも帰るわ」
「わたし寂しがり屋だから、仲間が欲しいの」
帰り道を忘れてしまった気がする。
わたしは泣きはじめる。
どこまでも荒涼と広がる乾燥した大地に、ビックマザーは立っている。
緑色の月が笑っている。
ーーパパにお弁当を持っていったの。
エリア0024。そこにスタップ細胞はあります。スタップ細胞。それは亜人を生み出す神のリソース。アダムとイブは智慧の実を食べました。ビックマザーは亜人の姫。
「ねぇ、パパ……」
わたしの大好きなパパ。最愛のパパ。
ビックマザーは処女に噛み付くレズビアン。
百合の花が散る。蜂蜜レモンティ。
巨大な魚の様な顔と、植物におおわれた巨体。
わたしが悪いの。わたしがエサだから。
「……逃げなさい!」
ごめんね、パパ。わたしはエウリュディケだった。
研究室の地下。そこにわたしは迷い込んだ。
なんだろうと、それに近づいたの。
それがビックマザー。
彼女はいろいろ教えてくれた。
「あなたはわたしのイブ」
彼女の一人がわたしに優しくキスをする。
どこまでも、どこまでも荒野。
これがビックマザーの、亜人の姫の夢なのかもしれない。
見上げると宇宙。
神話の世界が広がっていた…………。
作-さくららい